PSOがくれた出会い。【フィクションです】

Water Lipper <yhrhbztvgm> 2001/10/18 00:29:33

PSOを初めて数ヶ月、仲間と呼べる人が何人かできました。
そんな仲間の一人に、気になる人が出来ました。
彼女は、いつも私とつきあってくれて、
彼女とのチャットは、とても心地が良いものでした。
そんな彼女と時間を共に過ごす度、私は彼女に惹かれていきました。

チャットや、メールなどで、いろいろプライベートなことまで話し合うようになり、
歳や住んでいる場所が私と近いこと、お互い動物が好きなこと、
そしてゲームももちろん好きなこと。
いろいろ解ってきましたが、ますます彼女のことが気になってしまいます。
どんな顔をしているのか、どんな声をしているのか…
電話番号も聞いてみましたが、それは教えてはもらえませんでした。
でも、写真を送ってくれるとのことでした。

それから数日経ち、本当に彼女から写真が送られてきました。
メールでくると思ってたのですが、封書で送ってくれました。
中には手紙が入っていて、とても綺麗は字で、
「いつも遊んでくれてありがとう。あなたと一緒に過ごせる時間は、私にとって、とても大切な時間です。
これからも一緒に遊んでくださいね。ps、あなたの顔も見てみたいです」
と書かれていました。
もちろん私は、自分の顔を撮った写真をすぐに送りました。(筆不精なのでメールで)

彼女の写真を見ると、優しそうで、すこし気の弱そうな女性が、
とても気恥ずかしそうに写っていました。
そんな彼女に、私は一層惹かれていきました。

会いたい…
声を聞きたい…

私の気持ちはどんどん膨らみます。
その事を伝えても、やはり電話番号は教えてもらえませんでした。
会うことも拒まれてしまいました。

ある日、PSOのチャットで、
「私のことが嫌いなら言って欲しい。避けられるのは辛いから…」
嫌われているなら、彼女から去ろう、
そんな気持ちで、こう言ったのです。
すると彼女は、
「ううん。嫌いじゃないよ。でも…」
煮え切らない返事。
「でも?」
「会ったら、きっと私のことを嫌いになるから…」
「そんなことない!」
「やっぱり会えないよ」
「………」
少し重い空気が流れ、
その時はすぐに別れてました。

こんなことがあってから、
私は、PSOをしなくなりました。
彼女に会うと、また気まずくなりそうで。

PSOで彼女と会えなくなってから、
日にちが経つにつれ、
彼女への思いは、より深くなっていきました。

どうしても会いたい!
会って、直接話したい!

彼女が送ってくれた写真が入っていた封書に、
彼女の住所が書かれていたことを思い出しました。
私は休みの日に、その封書に書かれている住所へ出向くことにしたのです。
今までの私は、行動力なんてまったくない、
そんな人間でした。
彼女への思いが私を変えたのでしょうか。

住所に書かれていた家の前。
インターホンを押す指が震えました。
インターホンまで指をもってきては、
また腕をおろす。
こんなことを繰り返しながらも、
勇気を出して押します。

反応がありません。
もう一度…
はやり、反応がありません。

留守か…

やっぱり帰ろう。
これじゃまるでストーカーだ。

苦笑いを浮かべ、帰ろうとした時、
買い物袋を手にもった女性が、近づいてきました。
それは写真の彼女でした。
彼女の表情からは困惑、驚きが読み取れました。

「ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど、来てしまいました」
「…」
「あの時のこと、謝ろうと思って…」
「……」

彼女はずっと無言でした。
でも、なぜ無言だったのか、次の瞬間わかりました。
彼女は口と手をおもむろに動かし、
何かを伝えようとしています。

すこし悲しげな表情で…
声にならない声で…

彼女は、耳が聞こえなく、
話す手段として、手話を使っていたのです。
耳の聞こえない彼女は、話すこともできない…

電話番号を教えてくれなかった理由を知りました。
私と話したくないって思ったんじゃない。
話すことができなかったんだ…

私は、その場に留まることができなくなり、
走って帰ってしまいました。
私は逃げたのです。
この場から…

後悔しました。
彼女のその時の気持ちを考えると…
とても胸が痛くなりました。

そんなことがあってからも、彼女への思いは膨らむばかり。
私はその日から一週間後、
また彼女の家に行くことにしました。

彼女の家の前。
いつ出てきてくれるかわからないけど、
私は彼女が出てきてくれるのを、ずっと待ち続けました。

真上にあった太陽が夕日にかわるころ、
彼女の家のドアが開きました。
そこには、驚きを隠せない様子の彼女がいました。
彼女はすぐに家に入ろうとしましたが、
私は扉をおさえ「待って!!」と叫びました。
彼女が困った顔で、こちらに振り向きます。

私は、この一週間、
図書館と本屋で手話の本を探し、勉強し、
彼女に、オドオドした不慣れな手つきの手話で、
こう言いました。

「この間はごめんなさい。もし許してくれるなら、これからも友達でいてください」

彼女の目から涙があふれてきました。

そして、私に手話で答えてくれました。
「会いに来てくれて嬉しい。これからも宜しくお願いします」

PSOがくれた出会いです。







ps
この文を書いていると、後ろから私の妻が困ったような、
それでいて恥ずかしがっているような表情で、
「もう、何書いてるの。早く寝なさい!」
といった感じで背中をつついています。

私は、
「もう寝るよ」
と、今では手馴れた手話で答えました。

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